自己紹介の順番が3人前まで来たところで、テーブルの下でスマホを開いていました。メモアプリに、その日話す3行が入っています。名前、仕事、趣味。電車の中で作って、口の中で2回読んでから会場に入りました。用意していないと話せない、と思っていたからです。
こんにちは。Coelia代表の小幡十矛です。2021年に石川県から東京へ出てきて、会社の外の人と会いはじめたのは社会人3年目でした。いま20代が集まりを運営していますが、自己紹介はいまも上手くありません。上手くなろうとして、「うまく言えた日ほど何も起きない」ところまで行った側の話です。
Coelia代表・小幡十矛が、なぜCoeliaを作ったのかを書いています。なぜCoeliaを作ったのか
自己紹介の順番が3人前まで来たところで、原稿を開いていました
3年目に行きはじめた頃の交流会は、だいたい同じ形でした。10人前後で円になって座り、時計回りに30秒ずつ。名前と仕事と趣味を言う、という指定が入ります。順番が近づくと、周りの話が耳に入らなくなりました。自分の3行を頭の中で並べ直すことに使っていたからです。
用意するものは毎回同じでした。仕事は「都内でエンジニアをしています」。趣味は、そのままだと弱い気がして少し足しました。アニメが好き、とだけ言うと会話が止まる気がしたので、「最近はヒロアカを見ていて、1期から通しで見返しました」まで伸ばしています。言い終わって次の人へ渡るまでの3秒で、今の言い方は良かったか悪かったかを自分で採点していました。
そのうえで、誰にも言っていなかったことがあります。自分には差し出せる材料が無い、と思っていました。地元の話も、仕事の話も、その場の誰かが持っているものの下位互換に聞こえます。だから、言葉のほうで埋めるしかありませんと考えていました。噛んだ日や短く終わった日は、そのまま自分の準備不足として持ち帰っています。帰りの電車で、次はこう言おう、とメモを直しました。
うまく言えた日ほど、そのあとの30分が静か
半年くらい続けたある回で、はじめて手応えがありました。3行が全部つながって、途中で小さく笑いが起きて、時間もぴったりでした。座り直したときに、今日は良かったと思っています。
そのあとの自由に話す時間で、誰も自分のところへ来ませんでした。飲み物を取りに行って、戻って、壁際で30分立っていました。話しかけに行けばよかった、で片づけようとしたのですが、引っかかったのは別のことです。その2回前の、途中で言葉に詰まって尻すぼみに終わった回のほうが、あとから2人に話しかけられていました。
しばらく順番を取り違えていました。うまく言えた日に何も起きなかったのは、たまたま巡り合わせが悪かったからだと思っていたのです。でも回数が増えると、傾向がはっきりしてきました。原因は自己紹介の出来ではありません。出来が良いほうが、静かです。
完成した自己紹介には、相手が聞くことが残っていません
分かってしまえば単純な話でした。30秒で説明しきると、聞いている側はそこで話が終わったと受け取ります。質問は、分からないところと、もう少し聞きたいところから出ます。全部分かってしまった相手には、聞く理由が無いのです。
僕が磨いていたのは、話の終わらせ方のほうでした。趣味を伸ばして説明を足したのも、「それでどうなんですか」と思われないようにするためです。つまり、聞かれないように話す練習を半年していたことになります。
自己紹介は、伝える時間ではなく、聞かれる余白を置く時間でした。
| 項目 | 全部言う言い方 | 1つ残す言い方 |
|---|---|---|
| 趣味 | アニメが好きで、最近はヒロアカを見ています。1期から通しで見返しました | アニメが好きです。最近1つだけ、何度も見返している回があります |
| 仕事 | 都内でエンジニアをしていて、主にWebの開発を担当しています | 都内でエンジニアをしています。ここ最近ずっと、同じところで詰まっています |
| 住んでいる場所 | 石川から出てきて、いまは都内に住んでいます | 石川から出てきました。東京でまだ食べていないものがあります |
1つ残す言い方が上手いわけではありません。むしろ言い切っていない分、途中で終わったように聞こえます。効いているのはそこで、聞いた側に「何ですか」が1つ残ります。
余白を残しても、拾う人がいない回では何も起きませんでした
気づいた次の回から、言い切らない形に変えました。結果は半分です。空振りした回のほうが、はっきり覚えているものです。
空振りしたのは、自己紹介のあとが自由歓談だけの回でした。30秒ずつ全員が話して、拍手が起きて、「では、あとはご自由に」で解散します。置いた余白は誰にも拾われず、僕は壁際に戻りました。余白は、自分ひとりでは機能しません。拾う側がいて、はじめて質問になります。
拾われた回を並べてみると、共通点は自分の言い方ではなく会の形のほうにありました。3つあります。運営が輪の中にいて最初の橋渡しをしていたこと。自己紹介のあとにやることが決まっていたこと。席替えや小グループ分けのように、話す相手が入れ替わる進行が組まれていたことです。
このとき、探す場所が変わりました。それまで見直していたのは自分のメモアプリでしたが、見るべきだったのは会の詳細ページのほうです。自己紹介のあとに何をする会なのかは、たいてい申し込む前に書いてあります。
自己紹介が苦手なのは、自分だけの事情ではありません
ここまでは僕ひとりの話なので、同じところで止まっている人がどれくらいいるのかを調べた。2つの調査が近いことを扱っている内容です。
| 調査 | 対象と規模 | 分かること |
|---|---|---|
| 人見知りに関する調査(2026年) | 20〜69歳の男女1,100サンプル・2026年2月28日〜3月2日 | 人見知りの自覚がある人や周りから言われる人が挙げた場面の上位に、大人数の集まりや、人前での自己紹介が入ります |
| ひとり暮らしの新生活・人間関係意識調査2026 | 国内在住でひとり暮らしの20〜44歳・有効回答1,001名・2026年4月14日〜15日 | 20代女性の28.5%が、学校や職場の人間関係で「とても気を遣う」と答え、全世代で最も高い |
1つ目はクロス・マーケティングの人見知りに関する調査(2026年)です。緊張する場面として自己紹介が上位に並びます。2つ目はひとりぐらし研究所のひとり暮らしの新生活・人間関係意識調査2026で、人間関係そのものに気を遣っている度合いが20代女性でいちばん高いことが出ています。
ここは正確に書いておきます。1つ目の調査は、順位は公表されていますが、項目ごとの割合と年代別の内訳が公表資料からは確認できませんでした。だから「20代の何%が自己紹介を苦手としている」とは書けません。2つ目も年代別のサンプル数は公表されていません。言えるのは、自己紹介の緊張と人間関係の気疲れがどちらもよくある話で、そこで固まる自分がおかしい理由にはなりません、というところまでです。
やめた2つと、代わりに予約前へ移した3つ
効いたのは、新しく足したことよりもやめたことでした。準備の量は減っています。
| いつ | 前 | いま |
|---|---|---|
| 行く前 | 電車で3行の原稿を作り、口の中で読みます | 作りません。代わりに詳細ページで3点を確認します |
| 話す内容 | 趣味を伸ばして、説明を足しておきます | 足さない。1つだけ言い切らずに残す |
| 終わったあと | 言い方が良かったかを採点します | 採点しません。質問が来たかだけ覚えておきます |
予約前に見る3点は、これです。運営が会に入るか、当日の流れが書いてあるか、その日やる内容が決まっているか。どれも詳細ページを開けば数十秒で確かめられます。書いていない会が悪いという話ではなく、書いてある会のほうが、自己紹介のあとを自分で背負わずに済みます、というだけです。
うまくなったのは自己紹介ではなく、予定の選び方でした
いまも自己紹介は上手くありません。順番が回ってくると声は硬いし、噛みます。半年かけて磨いた原稿は使わなくなりました。結局、当初やろうとしていたことは達成していません。
変わったのは、行く前に開くものです。メモアプリではなく、会の詳細ページを開くようになりました。自己紹介は、伝える時間ではなく、聞かれる余白を置く時間でした。その余白を拾ってくれるのは自分の話術ではなく、その日の進行です。
運営する側になってからは、この3点を自分たちの側で用意しています。Coeliaは運営が全ての回に入り、当日の流れはイベントごとの詳細ページに記載済みです。はじめましてカード(いちばん上に「なまえ」欄がある自己紹介カード)を配る回もあります。一方で、やることが決まっている回と、話すこと自体が中心の回の両方があります。自己紹介のあとで固まりたくない日は、前者を選んでください。
それでも当日に詰まったときに戻すこと
選び方を変えても、その場で言葉が出ない日はあります。3つだけ用意しています。
- 短く終えます:名前と、ひとことだけで止めて大丈夫です。持ち時間を余らせても進行は困りません
- 直前の人に乗ります:「さっきの方と同じで」から入ると、「実は私も気になっていて」と無理なく会話に乗ることができます
- 運営を呼びます:手を挙げなくても、近くにいる運営に目を合わせれば入れます。橋渡しは運営の仕事です
3つとも、うまく話すための手ではありません。壁際で30分立っていたあの日に必要だったのは、言い方の改善ではなく、その場で自分が出す量を減らす選択肢が1つあることでした。
目的に合う次のページ
- 当日の会話そのものが不安なら交流会に話題を準備していくのをやめた話
- ひとりで行くこと自体に迷いがあるならサークルの一人参加は不安?5つの不安の正体
- 申し込む前に運営へ確認したいことがあるなら交流会の参加前に聞いておくこと
- 輪に入れず壁際に立っていた経験があるなら交流会で輪に入れなかったのは、入ったあとに輪のほうが割れていたから
- 行ける日から選びたいならCoeliaのイベント一覧
- サークル選びの基準を先に知りたいなら東京の社会人サークルを比較4軸で選びます
交流会の自己紹介が苦手なとき、先に押さえる3点
「交流会 自己紹介 苦手」で検索してきた場合、止まるのは話す内容の不足より、30秒で説明しきる原稿を仕上げてから行こうとしていることが多いです。ここまで読む前に、見方の型だけ先にまとめます。
- 重い理由:うまく言えた日ほど、そのあとが静かになる(説明しきると聞いた側はそこで終わりと受け取る)
- 置き換え:1つだけ言い切らずに残す。聞き返せる取っかかりを1つ持つ
- 具体案:自己紹介のあとに何をするかが書いてある回を1つ選ぶ(登録不要で一覧から確認)
参加前に聞いておく項目は交流会の参加前に聞いておくことにまとめています。
よくある質問
交流会の自己紹介は、原稿を用意していかないほうがいいですか?
用意すること自体は問題ありません。困るのは、30秒で説明しきる形に仕上げてしまうことです。説明しきると聞いた側はそこで話が終わったと受け取り、そのあとで質問が出にくくなります。1つだけ言い切らずに残しておくと、あとから聞かれる取っかかりになります。
自己紹介で話せる趣味や実績がありません。どうすればいいですか?
足さなくて大丈夫です。珍しい内容が求められている場面ではなく、名前と、聞き返せるものが1つあれば足ります。見返しているアニメ、行ってみたい店、最近やめたことでも成立します。
自己紹介が苦手なままでも、交流会に参加していいですか?
大丈夫です。参加している人の話し方はさまざまで、上手さを確かめる場にしていません。選ぶときに、運営が会に入るか、当日の流れが書いてあるか、その日やる内容が決まっているかを見ておくと、自己紹介のあとを自分だけで背負わずに済みます。
大人数の会と少人数の会では、どちらが自己紹介はラクですか?
人数よりも、自己紹介のあとの進行で決まります。大人数でも小グループに分かれる回なら、話す相手が入れ替わるので取っかかりが増えます。少人数でも自由歓談だけの回だと、置いた話題が拾われないまま終わることがあります。
Coeliaのイベントでは、自己紹介の時間がありますか?
回によって違います。はじめましてカード(いちばん上に「なまえ」欄がある自己紹介カード)を配る回もあれば、活動そのものから入る回もあります。どの回も運営が入って最初の橋渡しをするので、自分から話しかけ続ける必要はありません。




