渋谷のオフィスを出ると、人の流れはぜんぶ駅へ向かっていました。同じ方向へ歩きながら、私だけ速度が半分になります。改札の手前まで来て、そのまま通り過ぎます。社会人3年目、そういう夜が週に何度かありました。まっすぐ帰りたくなかったからです。
石川県から東京に出てきて、いまは20代の集まりを運営しています(Coelia代表・小幡十矛)。当時、歩きながらやっていたのは寄り道の行き先探しです。画面の光で顔だけ白くなる姿勢のまま、カフェの閉店時刻を調べて、ひとりで入って浮かないかを想像して、そこまでして何をするのかを考えた。3つ目でいつも止まります。
Coelia代表・小幡十矛が、なぜCoeliaを作ったのかを書いています。なぜCoeliaを作ったのか
つまり私が探していたのは、寄り道の行き先ではありませんでした。寄り道をやめる理由でした。3つ目まで来れば必ず見つかるので、そこから先は駅へ引き返すだけでした。引き返したころには、さっき通り過ぎた改札に、また同じ人の流れができています。
部屋を直す方向は、ひととおり試しました
最初に疑ったのは部屋です。鍵を回して、電気をつけるまでの数秒がいちばん重い。だったら、帰りたくなる部屋にすればいい。照明を替えて、スピーカーを置いて、休みの日に少し高い食器を買いました。
部屋は良くなりました。音も鳴るし、皿の並びも気に入っています。改札を通り過ぎる夜は、そのまま残りたい。
玄関で上着を持ったまま立っていて、順番が違うことに気づきます。避けたかったのは部屋ではありません。会社の頭のままドアを開けると、その日が仕事のまま終わります。私が欲しかったのは、その手前に挟む何かでした。
次に試したのが、週末に大きい予定を入れることです。土曜の昼から夜まで使う会に申し込みた。行けば楽しい。写真も残ります。日曜の夜には、来週の自分が少し立派になった気にもなります。ただ、水曜の夜は水曜の夜のまま帰ってきます。
それどころか、週末へ予定を寄せるほど、平日の夜はその日まで待つ時間になりました。埋めた日が1日増えると、待つ日は4日増えます。
探していたのは、いつも「ひとりで行けるイベント」でした
帰りたくないなら誰かを誘えばいい。そう思って連絡先の一覧を開いた夜も何度かあります。名前を上から下までひととおりなぞって、指が止まって、そのまま閉じた。水曜の21時に送る用事が、どうしても作れません。
あるとき、その週に検索窓へ打ち込んだ言葉を並べてみました。夜のカフェ、遅くまで開いている本屋、ひとりで入れる店、静かな席のある店。全部ひとり用です。人が出てくる言葉が1つもありませんでした。
理由は、いま書くとはっきりしています。人に会うのは休日に、時間を取って、それなりの覚悟でやることだと決めていました。平日の夜は、その手前の余りです。だから、いちばん空いている時間帯を、人に会う時間として数えたことが一度もありませんでした。
足りなかったのは行き先ではありません。その時間帯を数に入れる発想でした。帰宅後の最初の30分の過ごし方を決めておくと、夜の残り時間の使い方が変わります。疲れの種類で選べる3つのパターンは帰宅後30分の使い方3つのパターンにまとめています。
実際にやってみると、平日の夜のほうが軽かった
重い順に片づけようとして、いちばん軽いものを最後まで残していました。軽いと言えるところを、次の表にまとめた。
| 項目 | 休日に1日使う会 | 平日の夜の会 |
|---|---|---|
| 使う時間 | その日1日 | 退勤後の1〜2時間ほど |
| 終わりの決まり方 | 行ってみるまで分からない回がありました | 先に書いてあります |
| 合わなかったときに減るもの | 休みの1日 | 寄り道1回ぶん |
| 次の日 | 予定を空けておきます | いつもどおり出社します |
| 申し込むときの重さ | 重い | 軽い |
いちばん大きいのは2行目です。翌日が仕事だと、その時刻で終わらせる前提の人がほとんどでした。私が出た回では延ばす流れにならなかったので、抜けるときに理由を用意しなくて済んでいます。
3行目も同じ向きです。合わなかった休日は、休みが1日戻ってきません。合わなかった平日の夜は、まっすぐ帰っていた日と同じところへ着地します。失うぶんが小さいので、確かめるために1回行けます。
Coeliaの回でなくても同じです。終わる時刻が先に書いてあれば成立します。今夜できることは1つで、来週の平日から1日だけ選んで、カレンダーへ夜の枠を置いておくこと。中身は空欄のままで足ります。行き先を決めるのは、枠を置いたあとです。
休日が同じ形で潰れている場合は、外出の理由を先に見たほうが早い。その話は別に書きました(休みの日に家から出ない)。
ここまでは私が自分の平日でやってみた範囲の話で、すべての人に当てはまるかは確かめていません。休みが不規則な仕事だと、そもそも軽い時間帯の置き場所が変わります。
やめたのは行き先探しで、置いたのは平日夜の1回でした
入れ替えたのは2つです。やめたのは、改札の外で行き先を探すこと。置いたのは、始まる時刻と終わる時刻が先に決まっている平日夜の回を、週に1つ入れること。
Coeliaで平日の夜に開く回は、開始が19:30の回が多く、終わりの時刻もイベントごとのページに書いてあります。ダーツなら的があり、ボウリングならレーンが取ってあります。その日やることは、着く前から決まっています。
だから、退勤したときに決めるのは1つだけです。行くか、帰るか。行き先を考える作業は、もうありません。
はじめて平日の夜の回へ行った日のことは、音で覚えています。的に当たる音が3回続いて、4回目が大きく外れて、外した人がいちばん笑われます。順番が回ってくるので、話が途切れても、そこで気まずくなりません。会社帰りの荷物を足元に置いたまま、2時間が終わった。
会場に着いたら運営スタッフに「初めて参加しました」と一言伝えるだけで、スムーズに案内してもらえます。輪に入りづらいと感じたときも、その場で気軽に相談できます。参加できるのは20代の方で、ひとりでの参加を歓迎しています。
遅れそうな日は、着く時刻を伝えてから向かえます。連絡は公式LINEかサポートページからできます。
いまも、まっすぐ帰る日のほうが多い
週の半分以上は、まっすぐ帰ります。改札を通って、乗り換えて、鍵を回して、電気をつけます。何も起きません。ドアの前の数秒は、いまも少しだけ重いままです。
変わったのは、その日の数え方です。以前は、まっすぐ帰った日を「他に行くところがなかった日」として数えていました。いまは、寄る日と寄らない日があるだけになりました。
欲しかったのは、帰りたくなる部屋でした。手に入ったのは少し違って、帰る前に寄れる場所が1つある状態でした。部屋は当時のまま、照明とスピーカーが少し良いだけです。
帰りたくない夜に要るのは、帰らない理由ではなく、帰る前に寄れる場所でした。
よくある質問
ひとりで参加しても浮きませんか?
着いたら運営に「はじめてです」と言ってください。ひとりでの参加を歓迎しています。食事や飲みの回では、はじめのうちにはじめましてカードを書く時間があります。ダーツやボウリングの回は、的とレーンがその役をします。輪に入りづらいときは、その場で運営へ相談できます。
仕事のあとで疲れています。それでも行って大丈夫ですか?
話し続ける進行にはしていません。ダーツは投げる人が1人ずつ替わります。回によっては話題サイコロや協力型ボードゲームのitoを置いているので、聞き役のままでも時間が進みます。
何時に終わりますか?
回によって変わります。開始と終了の時刻はイベントごとのページに出ているので、翌日の朝から逆算して選べます。
残業で開始に間に合わないかもしれません。
遅れそうなときは、公式LINEかサポートページから連絡できます。到着した時点から入れます。
平日の夜の回は、いつ開いていますか?
開始は19:30の回が多く、日時はイベントごとのページとイベント一覧に出ています。自分の生活と重なる回があるかを、先に見てください。
お酒を飲まなくても参加できますか?
できます。ダーツやもくもく会のように、飲むことが主役ではない回があります。参加費とは別に飲食代がかかる回があるので、イベントごとのページで先に確かめられます。
仕事帰りの服装のままで行っても大丈夫ですか?
大丈夫です。平日の夜の回は、仕事終わりに直行する人が入ってくる時間帯です。気になるときは上着を1枚脱ぐくらいで足ります。迷ったときの目安は交流会の服装にまとめた。
会社の人と飲みに行くのとは、何が違いますか?
違うのは、翌日も顔を合わせるかどうかです。会社の飲みでは、その場の話が次の日の席まで続く。外の回は、その日で一度切れます。どちらが良いという話ではなく、切れる側が1つあると平日の夜の使い道が増えます。
上京していなくても、この話は当てはまりますか?
当てはまることがあります。実家から通っていても、平日の夜に会える相手は職場の人へ寄ります。人に会うのは休日にやることだと決めていた部分は、住んでいる場所と関係なく残ります。




