対人体力が 減ったから 人と 会えなくなった、と いう 説明は 実感に よく 合います
この感覚には、もう名前がついています。対人体力。人と会うために使う体力のようなもので、学生の頃は毎週でも平気だったのに、いまは月に1回の約束でも重い。だから減ったのは自分の対人体力だ、という説明です。
コエリアリサーチャー 友達Aです。普段はCoeliaのイベント設計を担当しながら、人間関係を構造から読み解いています。この記事で確かめるのは、疲れの正体が本当に「残量の減少」なのかです。
要点:社会的親和モデルの研究では、人は社交の量に自分なりの最適な範囲を持っていて、そこから外れると元へ戻そうとすることが観測されています(O'Connor & Rosenblood, 1996)。会ったあとの疲れは残量がゼロになった合図ではなく、最適な範囲を超えたときに出る調整の合図です。週1か月1で十分だと感じるなら、増やすべきは回数ではなく、会うたびに日程から組み直さずに済む場を1つ持つことになります。
対人の体力に合う開催を追いたいときは、公式LINEで次の案内を受け取る。すぐ日付を選ぶならイベント一覧をのぞいてみてください。
対人体力という言い方は、よくできています。体力という比喩には3つの性質が入っている。上限があること、使えば減ること、回復に時間がかかること。どれも実感と一致します。大人数の飲み会の翌日は誰とも話したくないし、土曜に人と会うと日曜は家から出られない。上限があって減るものだ、と考えると説明がつきます。
年齢と一緒に落ちていくという感覚も裏づけがあるように見えました。学生の頃は授業のあとにそのまま4時間しゃべっていられたのに、いまは2時間で切り上げたくなる。同じことをしているのに消耗が早いなら、減ったのは自分の側だと考えるのが自然です。
この記事は、比喩そのものを否定したいわけではありません。疑うのは、そこにくっついているもう1つの主張のほうです。「上限が下がったのだから、関係を維持できる回数も下がった」という主張。対人体力を測った研究はありませんが、人が社交の量をどう調整しているかを、その場で何度も記録した研究ならあります。
人と 会って 疲れるのは、 残量が ゼロに なった合図ではなく 最適な 範囲を 超えた合図です
心理学者のショーン・オコナーとローン・ローゼンブラッドは1996年、66人の日常を経験サンプリング法で調べています(O'Connor & Rosenblood「Affiliation motivation in everyday experience: A theoretical comparison」Journal of Personality and Social Psychology, 70巻3号・1996)。経験サンプリング法は、1日に何度も合図を出して、そのときの状況と気持ちをその場で答えてもらう調べ方です。人が社交をどう調整しているかを、事後の記憶ではなくその場で拾えます。なお、この論文は原典にあたれておらず、人数と手法と結論は複数の資料が一致する範囲で確認しました。
そこから出てきた説明が社会的親和モデルでした。人は社交の量について、多すぎず少なすぎない自分なりの最適な範囲を持っている。範囲を上に外れれば一人になろうとし、下に外れれば誰かと過ごそうとする。研究者たちはこれを、食事の量の調節に近い仕組みとして説明しました。満腹は胃が壊れた合図ではなく、必要量に届いた合図です。
この枠組みは、その後の調査でも観測されています。ドイツの大学生65人を14日間、1日最大7回の記録で追った研究では、有効な3,341件のデータから、直前にどれだけ人と接していたかで次の行動の向きが変わることが示されました(Reissmann ほか, 2021)。直前に接触がまったくなかった人は、そのあと接触が増える向きへ動く。直前に多く接していた人は、同じ気分でも減る向きへ動きます。
ここが最初の分かれ道でした。体力なら、鍛えれば上限が上がります。けれど最適な範囲は上限ではなく設定値なので、上げるものではない。会ったあとに疲れるのは、性能が落ちたからではなく、設定値を超えたことを体が知らせているということになります。
対人体力が 尽きたのではなく、 会いたい 人と 会う 前に 設定値を 超えています
ここから先は、数えて確かめた話ではない。観測であって検証ではありません、と先に断っておきます。設定値として読み直すと、辻褄の合う光景が1つあります。
同じ「月1」なのに、軽い月と重い月がある。設定値の話だとすると、差を作っているのは月の回数ではなくその時点で設定値からどれだけ上へ外れているかです。会議で2時間しゃべり、取引先と昼を食べ、歓送迎会に出た週は、週末を迎える前にもう上へ外れている。そのどれも自分で選んだ社交ではありませんが、設定値は選んだかどうかを区別しません。
つまり、同じ約束が重くも軽くもなるのは約束の中身ではなく、その週のどこに置かれたかで決まります。上へ外れたあとに置かれた約束は、楽しみにしていたはずのものでも重い。行きたくないのではなく、位置の問題でした。逆に、平日に誰とも深く話さなかった週は、週末の予定が驚くほど軽い。
ここで、変数が2つあることを分けておきます。設定値が決めるのはその週に何回ぶんの社交に耐えられるかという上限のほう。もう1つ、その1回を実際に成立させるまでにかかる手間という変数が別にあります。前者は自分の内側にあって動かせませんが、後者は外側にある。
設定値が同じでも、手間が重ければ実現する回数は減ります。逆に手間が軽ければ、同じ設定値のまま会う回数は保てる。だから手を入れる先は、上限のほうではなく手間のほうです。その手間が、いつから、なぜ重くなったのか。次に数字で見ます。
自由時間が 減ったわけではないのに、 交際の 時間だけが 20年減り続けています
総務省統計局の社会生活基本調査は、5年ごとに1日の時間の使われ方を調べています。令和3年(2021年)調査の結果を5年前と比べると、交際・付き合いの時間は1日あたり17分から10分へ、7分減りました(総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果」2022年8月31日公表・週全体の総数)。東京の20代の同じ区分を1文にまとめた出典つき数字は引用用データページです。
次の表は同じ調査の週全体・総数で、いずれも1日あたりの平均時間です。注目したいのは、同じ5年間で休養・くつろぎの時間が20分増え、趣味・娯楽はほぼ横ばいだったことです。休養・くつろぎと趣味・娯楽は削られていないのに、人と会う時間だけが落ちました。
| 行動の種類 | 2016年 | 2021年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 休養・くつろぎ | 1時間37分 | 1時間57分 | 20分の増加 |
| 趣味・娯楽 | 47分 | 48分 | 1分の増加 |
| 交際・付き合い | 17分 | 10分 | 7分の減少 |
しかもこれは5年で起きた変化ではありません。同じ調査の20年の推移では、2006年以降はどの回も前回を下回っていて、20年で半分以下になりました。ずっと同じ方向へ動き続けている。
なぜ交際だけが減るのか。ひとつ説明がつく読み方があります。かつて人と会うことは、別の用事にくっついて起きていました。実家の近所づきあい、社宅や寮の廊下、商店街の買い物、仕事帰りにそのまま流れる一杯。どれも「会うために出かけた」わけではなく、生活の動線の上でついでに起きた接触です。会うための時間を確保した覚えがないので、時間の使い道としてはほとんどゼロ円で手に入っていた。
その寄生先がなくなると、交際はそれ単体で立てる予定になります。単体の予定になった瞬間、会うたびに固定費がつきました。日程を合わせる往復、店を決める手間、行き先までの移動、直前に体調を見て判断する時間。1回の費用が上がった活動は回数が落ちやすい。ここは気持ちの問題として説明しなくても筋が通ります。
数字の届く範囲も書いておきます。2021年の生活時間は2021年10月16日から24日のうち2日間を調べたもので、新型コロナウイルスの緊急事態宣言が全面解除された直後にあたります(同調査の注記)。この年だけを取れば感染症の影響が混ざります。ただし減少は2001年から続いていて、コロナだけでは説明がつかない。寄生先が減ったことと交際時間の減少を直接つないだ研究をこの調査で確認したわけでもなく、ここは状況証拠です。
週1か 月1で 十分だと 感じるのは、 1回あたりが 重くなった 世界での 合理的な 答えです
固定費の話として読み直すと、いま起きていることの説明がつきます。「また今度」と言い合ったまま流れるのは、相手への興味が薄いからではなく、今度を1回立ち上げる費用が高いから。日程調整のやり取りが4往復して、決まる前に両方の熱が下がるのも同じ構造でした。社交辞令のその後については「また今度」は貯まらずに腐るで別の角度から整理しています。
そう考えると、週1か月1くらい会えれば十分という感覚は、社交性が落ちた結果ではありません。1回あたりが重い世界で、設定値を超えないように回数を下げた合理的な適応です。おかしいのは感覚のほうではなく、条件のほう。
ただし、回数を下げれば自動的に楽になるという話でもない。ここは反対側も書いておきます。女性251人の交友関係を調べた研究では、最後に連絡してからの間隔が長い相手ほど、親しさの評価が低いという関係が見つかりました。その結びつきは親族のほうが強く、裏を返すと友人は連絡が空いたときに保ちにくい。研究者たちは、友人関係の維持にかかる元手は親族より高いと結論づけています(Roberts & Dunbar, 2011)。対象は女性251人で、日本の20代でそのまま同じになるとは書けませんが、間隔が空けば勝手に薄れる側の力が働くこと自体は想定しておいたほうがいい。
この2つを並べると、条件がはっきりします。月1で十分な関係が成り立つのは、次に会うまでの段取りが軽いときだけ。軽ければ、月1でも切れません。重ければ、月1は「気づいたら1年」に変わります。
変えられるのは 会う回数ではなく、 毎回 ゼロから 段取りを 組む 条件の ほうです
手を入れる先は自分の対人体力ではありません。鍛える対象でもなければ、根性で超えるものでもない。回数を増やすのも違います。増やせば設定値を超えて、また同じ疲れが返ってくるだけです。
動かせるのは、会うたびに日程から組み直しているという条件のほうでした。ここだけは自分の外側にあります。
- 曜日と場所が先に決まっている集まりを1つ持つ=日程調整の往復が消えます。申し込む月だけ申し込めばよく、申し込まない月に説明も要りません。Coeliaならダーツ会の開催日一覧のように、日付と会場が先に出ている枠があります
- 誘う・断るの判断を、1対1の交渉から外す=相手との関係に断りの重さが乗らなくなります。設定値から上へ外れている週は、申し込まないだけで済みます
これは予定を1つ増やす話ではありません。増やすと設定値を超えて、また同じ疲れが返ってきます。減らすのは1回あたりにかかっていた手間のほう=日程を合わせる往復、店を決める時間、断るときの気まずさ。日付が先に決まっている枠は、この3つが最初からゼロの枠です。会う回数は変えないまま、同じ回数にかかる手間だけが落ちます。
友人と会うその1回も、置き換える必要はありません。置き換えると、その友人との間隔がそのぶん延びます。
人付き合いが面倒なのに人とはつながっていたい、という状態そのものを扱った記事は人付き合いは面倒。それでもつながりは増やしたいにあります。深く仲良くなれなかった相手を切らずに残すことの意味は人脈が広がらない理由で扱いました。
人と 会うのが しんどいとき、 先に 押さえる 3点
- 重い理由:平日の選べない付き合いで週の前半に設定値を超え、会いたい相手との約束がそのあとに置かれる
- 置き換え:増やすのは会う回数ではなく、段取りの軽い枠のほう。友人と会う1回はそのまま残す
- 具体案:日付が先に決まっている会を1つ見つけ、申し込む月だけ申し込むならイベント一覧かひとり参加歓迎の開催一覧か週末の開催一覧で負荷の低いイベントを1つ見る(登録不要)
よく ある 質問
対人体力は鍛えれば増えますか。
社会的親和モデルで扱われているのは上限ではなく、多すぎず少なすぎない最適な範囲です。範囲を広げることを目標にすると、超えるたびに失敗したように感じます。増やす対象ではなく、超えない使い方を決める対象だと考えるほうが実態に合います。
週1や月1しか会わない関係は、続かないのでしょうか。
頻度そのものより、次に会うまでの段取りの重さで決まります。最後の連絡からの間隔が長い相手ほど親しさの評価が低いという調査はありますが、間隔が空く原因が段取りの重さなら、そこを軽くすれば頻度を上げなくても切れにくくなります。
仕事の付き合いで疲れる日と、友人と会って疲れる日は別物ではないですか。
気分の面では別物ですが、設定値は自分で選んだ社交かどうかを区別しません。平日に人と話す量が多かった週ほど、週末の約束が重く感じられるのはこのためです。
交際の時間が減ったのは、コロナの影響ではないのですか。
2021年の調査は緊急事態宣言が全面解除された直後に行われているので、その年の数字には影響が混ざります。ただし交際・付き合いの時間は2001年から一貫して減り続けていて、感染症だけでは説明がつきません。
Coeliaのイベントなら段取りは軽くなりますか。
日付と場所が先に決まっているので、相手と日程を合わせる往復は要りません。申し込まない月に理由を説明する必要もないです。どの日に何をやるかは開催ごとに違うので、日付と内容を見て選べます。
何歳まで参加できますか?
Coeliaのイベントは20代限定で、満20歳以上30歳未満の方が対象です。満20歳未満・満30歳以上の方の参加はご遠慮いただいております。
イベントで仲良くなった人と連絡先を交換できますか?
連絡先の交換は自由です。当日その場で、参加者同士で交換していただけます。ただし連絡先の強要やしつこい声かけは禁止で、運営が関与しない外部のイベントやコミュニティへ誘う目的での交換もお断りしています。気になることがあれば、その場でも後日でも運営にご相談ください。交換しなかった場合も、同じイベントに参加すればまた顔を合わせられます。詳しくは、社会人サークルで連絡先を交換する前に知っておきたいことをご覧ください。勧誘がどこから届くのか、Coeliaが何をお断りしているのかをまとめています。
予約のキャンセルはできますか?
基本は開催4日前まで無料でキャンセルできます。イベントによって扱いが違うことがあるので、詳しくは利用規約をご確認ください。
参考文献
- O'Connor, S. C., & Rosenblood, L. K.「Affiliation motivation in everyday experience: A theoretical comparison」Journal of Personality and Social Psychology, 70(3), 513-522(1996)。原典本文は未読で、書誌情報と調査の骨子のみ確認
- Reissmann, A., Stollberg, E., Hauser, J., Kaunzinger, I., & Lange, K. W.「The role of state feelings of loneliness in the situational regulation of social affiliative behavior」PLOS ONE, 16(6), e0252775(2021)。大学生65人・14日間・1日最大7回の経験サンプリングで、有効データ3,341件
- Roberts, S. G. B., & Dunbar, R. I. M.「Communication in social networks: Effects of kinship, network size, and emotional closeness」Personal Relationships, 18(3), 439-452(2011)。女性251人の交友関係を対象に、最後の接触からの間隔と親しさの関係を調べ、友人関係の維持費用は親族より高いと結論づけた。抄録と書誌情報で確認し、本文全体は未読
- 総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果」(2022年8月31日公表)。週全体の総数で、休養・くつろぎ1時間37分から1時間57分、趣味・娯楽47分から48分、交際・付き合い17分から10分
- 総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果 結果の概要」。2001年・2006年・2011年・2016年・2021年の推移で、交際・付き合いは男性25分・20分・18分・15分・8分、女性27分・24分・20分・19分・12分

